Incubated the Flower 「瀬良さん、このあと少しお時間よろしいですか」  事務所でのお仕事終わり、帰り支度をしているところをチーフマネージャーの合田さんに呼び止められた。  ここ最近の現場監督は事務所スタッフに任せていることが多かったから、珍しく最初から居ると思っていたらどうも直接話したい用事があったようで、謎が解けてすっきりした。合田さんはその巨躯をすまなさそうに縮こまらせて続ける。 「お忙しいようでしたら、資料をお渡ししますので面談は後日でも構いませんが」  言われて、思わず何人かで固まって荷物を纏めていたメンツの顔色をうかがった。ちょうど帰りに一緒にご飯を食べて帰ろうとしていたところだったものだから、なんともタイミングが悪い。 「資料があるってことはお仕事の話でしょ。聞いてきなよ。席は取っとくから」  純佳ちゃんにそう言ってもらって後から合流するということでその場は話が纏まり、私はひとり空き会議室に通されたのだった。  荷物を置いて席につくと、向かいに座った合田さんは手にしていたフォルダから資料を何枚か取り出して机の上に並べていく。  舞台のオーディションの案内だった。プリントアウトされたコピー用紙の上部にはピンク色をした作品のロゴがあしらわれ、「魔法少女」という単語がいやでも目を引いた。  簡単な概要の説明のあと、合田さんは率直に「受けてみませんか」と勧めてくれた。 「どうして私なんですか?」  舞台出演に意欲的なメンバーは私以外にもいる。だからこういった案内が事務所に回ってきた時はその数人を集めて、機会を平等に与えてくれるのが常だったものだから先の私の疑問は当然といえるだろう。  「関係者から瀬良さんのお名前が挙がったと聞いています」  どうも制作側から今回のオーディションの開催にあたって声をかけたい人材についてのヒアリングの際に、私の名前が出てきたのだという。その名前を挙げたのは、審査員のうちのひとり、いくつかあるコミカライズのうち、1シリーズを執筆した漫画家の先生なんだとか。  そこまで聞いて、私は少し驚いた。  私のことを知っている漫画家さんがいたこともそうだし、さらにその人が私のことをプッシュしてくれたという事実もなんだか不思議な感覚がした。もしかして、ライブの観客席やトーク会の相手の中にその人も混じっていたのだろうか。資料に印刷された名前にもどこか見覚えがあるような気がする。どこで見たんだっけか。  ただし、合田さんはすぐに、今回の件は抜擢ではなくあくまでオーディションへの推薦であって、出演が決まっているわけではないことも付け加えた。  今はまだ何十人もいる候補の中のひとりでしかなく、オファーではない。最終的にはオーディションを受けて、自分自身の力で合格を勝ち取らなければならない。  もう一度机の上の資料をじっと見つめた。  複数メンバーへの声掛けであるならば二つ返事で手を挙げていたはずなのに、今回は思いのほか答えを出すのに時間がかかっていた。  舞台。魔法少女。オーディション。推薦。  それらの単語が頭の中をぐるぐるとひっきりなしに駆け回り、思考することを邪魔してくる。  幼い頃の夢のひとつが突然降って湧いてきて、考えがうまくまとまってくれやしない。  魔法少女。  自分がその言葉と結びつく日が来るなんて予想だにしていなかったものだから、この衝撃は私にいったいどんな顔をさせたのだろう。   ◆  RAINで送られてきたファミレスに入ると、きょろきょろと店内を見回していた私を、すぐに塔子ちゃんが見つけてボックス席から手を振ってきた。  今回のメンバーは塔子ちゃん、純佳ちゃん、そして去年末に加入してきたばかりの後輩ちゃんが二人と私の計五人。四人掛けのテーブルだったから片側が少し手狭だ。  席に備え付けられた端末で注文を済ませて、既にテーブルの真ん中に鎮座していたシェアポテトに手を伸ばして一口かじりつく。咀嚼し終えて飲み込んだのを見計らって、四人はさっそくどんな内容の面談だったかを聞いてきた。 「舞台のオーディションだって」  細部は省いて大雑把に内容を話す。 「それで、漫画を描いてる人が私の名前を出してくれたらしいんだ」 「穂乃花っちすご!それって誰なのかって聞いてもいいのかな?」  興奮気味な塔子ちゃんにそう聞かれて一瞬手元の資料に視線を落とした。これは口外してもいい情報なのかどうか、思考を巡らせる。……うん、大丈夫。なはず。 「星川しずく先生、ってひと」  言った瞬間、向かいに座った純佳ちゃんの食事の手がほんの一秒ほど止まり、視線だけを別の方向へと遣った。  「あ、知ってます」「メインは少女漫画畑の方ですよね」という後輩ちゃんたちの会話に続けて塔子ちゃんも急に声のトーンを下げて「へぇ」とだけ相槌をうつ。 「塔子はそういうの疎いもんね。私、何冊か持ってるから今度貸してあげよっか」 「ありがたき〜純佳っち〜」  本当にまばたきの間の出来事で、違和感を覚えた次の瞬間には二人は普段通りに戻っていた。後輩の二人は気づいていないくらいの、「どうしたの」と尋ねるほどでもないくらいのほんの小さな感情の揺らぎ。  たぶん、二人はその漫画家さんについて何か知っているのだろう。私も合田さんにその名前を聞いた時から何かが奥歯に挟まっていたし、実際に合田さんの反応にも違和感があった。まるで、予想していたものとは違う反応を目の当たりにして拍子抜けしたかのような。  けれど、その時は深くは考えなかった。 ◆  最後のページを読み終えて、私は漫画本をそっと閉じて息を吐いた。オーディションに向けての予習として純佳ちゃんに借りた本だ。  透明なブックカバーで丁寧に包まれたそれは、なんとサイン本。よく貸してくれたものだとは思うけど、折り目なんてつけようものなら怒られることがわかりきっていたから扱いも慎重になるというものだ。  手渡される時に驚いて「サイン本持ってるなんてすごいねぇ」と言うと、なんとも微妙な表情を浮かべて「……面白そうだから黙っとこ」と聞こえよがしにこぼしていた。なんのこっちゃ?  作品の内容は、ひとことで言えば今風の魔法少女もの。明るくて夢や希望に溢れたものではなく、かわいらしい見た目の裏側に怖くて重たい雰囲気を抱えたダークな作品だった。  そういう作品はいくつか見たことがあったし、流行りの作風であることも承知している。私自身もホラーや過度でないスプラッタに耐性があったので案外すんなりと受け入れられはしたけれど、いまいちハマりきれないというのも事実だ。  幼い頃から日曜の朝にテレビにかじりついて見ていたものとは少し違う、いわゆる大人向けの作品。  本を勉強机に置いて椅子の背もたれに思い切り体重を預ける。ぎち、と音が鳴って世界が反転して見えた。  もう「受けてみます」と返事をしたというのに、私はまだ迷っているのかもしれなかった。一度提出してしまった答えは、消しゴムをかけていまさら撤回なんてできないというのに。  天井の蛍光灯から伸びる紐に向かって手を伸ばしたけれど、どう頑張っても掴めやしなかった。 ◆  オーディション当日。私は会場に着いてからずっと気持ちが落ち着かなかった。  台本を読んでは閉じて、また開く。何度も深呼吸をして、指先まで冷え切っていた手を握っては開いてを繰り返していた。  わかりやすいくらいに緊張している。本番前の緊張だなんて珍しいことでもないけれど、ここまでのものはずいぶんと久しぶりだった。  時間を確認してからお手洗いに立つ。家を出る前にしっかりと固めてきたからきっと逆立ちしたって崩れやしないだろうけど、前髪の現状が気になったからだ。  ふと、角を曲がった廊下の向こうから明らかに纏うオーラが違う人が歩いてくることに気付いた。髪が長くてきれいな女性。最初はオーディション参加者かなと思ったけれど、それにしてはなんだか服装がそれっぽくない。  無遠慮にじっとその人のことを観察して、彼女のかけていたべっ甲フレームの眼鏡越しに目が合った瞬間、思わず声が喉を衝いた。 「あっ」 「お、来たな魔法少女。元気にしてたか?」  まさかここで会うことなんてないと意識外に置いていた人との思いがけない再会に、鞄を取り落としそうになった。 「絢香さん!」  思わず駆け寄って名前を呼び、そのままどうしてこんなところにいるのかと聞くと、「仕事」と簡潔に返された。 「なんだよ、聞いてるんだろ?」 「知らなかったですよぉ。どうしたんですか?もしかして芸能活動復帰ですか?」 「……ん?んーー……」  ここは舞台作品のオーディション会場だ。絢香さんは卒業後は芸能界を引退して漫画を描いているのだから、そんな人がなぜこんなところにいるのかを考えてそういう結論に行き着いた。あぁでも、同じ建物の違う場所に用事があるという可能性もある。早とちりはよろしくない。  でも、もし復帰であるなら嬉しい。たとえ違う場所で生きているとしても、同じ業界で活動していればもしかしたら一緒にお仕事ができる可能性があるからだ。 「……なんか、認識に齟齬がないか?」 「そご?」  急に難しい言葉を使わないでほしい。ぽかんとする私をよそに、絢香さんはこめかみに人さし指を当ててうーん、と数秒唸った。 「星川しずくって知ってるか」 「え、知ってます。なんで急に?」  オーディションのお話を頂いてからずっと引っかかっていた名前が急に出てきて、心臓がどきりと跳ねた。卒業メンバーとはいえ悲しいかな絢香さんはもう部外者であるから、余計な情報まで言ってしまわないように気をつけたつもりだったけど、妙な反応になっていなかっただろうか。 「それ、私」 「は?」  絢香さんは自分のことを右手で指さしてそう言ったあと、左手も同じように人さし指を立て、交互に顔に近づける動作を繰り返した。 「マイネームイズ、アヤカ・タチカワ。アイム、シズク・ホシカワ」 「え〜〜〜〜〜!?」 「相変わらず声がでかいなぁ」  驚く私に対して絢香さんは眉を下げ、両手を開いて海外のコメディのように少し大げさに肩をすくめる。  そうだ。そうだった。絢香さんが星川しずくというペンネームで漫画を描いていることは知っていたはずだったのに、なぜだか頭からすっぽりと抜け落ちていた。説明をした絢香さん自身も、「言ってなかったっけ?いや、言ったよな。うん、言った言った」と不思議そうだ。  たぶんだけど、ほかでもない本人に星川しずく=立川絢香であることはまわりには秘密にしてほしいとお願いされたから、うっかり口を滑らせないように意識的に≠で括っているうちに本当に忘れてしまったんだと思う。私の忘れっぽさ、ここに極まれり、か。  けれど、ここ最近のメンバーや合田さんの反応という魚の小骨のような違和感の理由が氷解して、少し肩の力が抜けた気がする。 「それにしても、絢香さんが審査員だなんてなんだか変な感じ」 「そんなもん私だってそうだよ。原作でもキャラデザでもない作画担当だってのに」  気が抜けたついでに出てきた世間話に、絢香さんは首のうしろあたりを掻きながら複雑そうな表情を浮かべる。「じゃあなんで」と聞くと、「たぶん元アイドルってのがデカいのかもな」と大きなため息をついていた。 「あ、先生、おはようございます。そろそろ……」  背後から声が聞こえてきて振り向くと、いつの間にかひとりの女性が立っていた。首から提げたパスを見るに今日のオーディションのスタッフさんのようで、あわててよろしくお願いしますと頭を下げる。数秒後に顔を上げると私の大声に一瞬驚いた様子を浮かべていたけれど、すぐににこやかに笑ってお辞儀を返してくれた。 「はーい、今行きますよ……っと」  絢香さんはトートバッグを肩に掛け直してスタッフさんの方へと歩み寄る。「先生」、と呼ばれたのはほかでもない絢香さんだ。いや、今は星川先生か。そのやりとりを見てようやく私の中で完全に立川絢香と星川しずくがイコールで繋がった実感を得られた気がする。  すれ違いざま、絢香さんは私の肩に手を置いた。 「私がおまえを本物の魔法少女にしてやるよ」  きゅう、と音が聞こえるくらいに瞳孔が開いた。  彼女がこのオーディションで私の名前を出した理由。加入当初からずっと歌が好きで、アイドルが好きで、魔法少女が好きと言って憚らなかった私に、呆れながら「魔法少女」なんてそのものずばりなあだ名を付けてきたことを思い出す。 「……って言い切れたらかっこいいんだけどな」  廊下の角を曲がる直前に振り向いて、眉を下げながら笑って絢香さんはそんなことを言い残して行った。 ◆ 「ありがとうございました、ですの」  扉が開いて何人かが室内に向かって頭を下げながら退出していった。入室を促されるのを待つ次のグループの私たちにも会釈をして控室の方へと歩いていくのを見送る。  開いていた台本を閉じて膝の上に置き、声がかかるのを待つ。 「次のグループの方、入室してください」  不意にじっと見つめていた扉が開いてスタッフが顔をのぞかせる。さっき廊下で見かけた人とは違う人だった。  各々返事をして座っていた椅子の並びの通りに隊列を組んで部屋に入り、その際には判で捺したように深々とお辞儀。着席を促されたあとに端から順番に自己紹介が始まった。姿勢はいい方だとよく言われるけれど、いつも以上に背筋をピンと伸ばす。  審査員席に座ったうちのひとり、星川しずく先生は真剣な表情で、時折手元にメモをとりながら最初の一人のアピールタイムに視線を注いでいた。プロの顔つきだ。そりゃあそうだ、プロなんだから。  アイドルには時間制限がある。  いつからかそんなことを考えるようになった。  先輩や同期が何人もグループを離れていって、落ち込むことがあった。特に、直近の二人の卒業は今でもまだ少しだけ尾を引いている。  卒業や引退なんてアイドルに限らず平等に誰しもにどうしたってつきまとうものだというのに、そんな当たり前を私はなかなか受け入れることができなかった。今目の前にいる絢香さんなんて、私たち二期生が加入してから最初に卒業していったひとだ。  ずっと続いていくと思っていたことが、ひとつまたひとつと終わっていった。そのたびに、アイドルを卒業したあとにも人生は続いていくのだということを、ぼんやりと意識するようになった。  高校の進路希望調査はずっと突っぱね続けていたし、高3のぎりぎりまで私はずっとアイドルとして生きていくのだと信じて疑わなかった。  だっていうのに、今は進学して保育を学んでいる。誓って言えるが、仕方なくじゃなくてちゃんと興味のある分野だ。学生と芸能活動の二足の草鞋は想像以上にしんどいけれど、毎日が充実していた。  それはアイドルを辞めるためではない。アイドルじゃない自分の人生もちゃんと続いていくということを知ったからだ。  だからこそ、今はアイドルであるこの時間を大切にしていたかった。できることを、できるうちにやっておきたかった。  夜は短し、励めよアイドル。  ひそかに私が胸に掲げるモットーだ。 「ありがとうございました、一度お座りください」  トップバッターの自己紹介が終わり、一瞬の間隙が訪れる。資料の整理の途中、ふと彼女と視線がぶつかった。口元がほんの少し吊り上がるのが見えた気がする。  ぐっと拳を握り込む。ごくりとつばを飲み込んだけれど、ちっとも喉は潤ってくれなかった。焦りが加速していく。  そんな時、いつかの実習で訪れた保育園のことを思い出した。  その日は運悪く夜に22/7のライブが重なってしまっていて、朝からずっと動きっぱなしで気を抜けば倒れそうだったのは忘れたくても忘れられない。実習が終わったら大急ぎでタクシーに飛び乗って会場入りして、リハーサルだって途中参加だった。  その目の回る忙しさのせいか、うっかり園児のひとりに「先生ね、このあとアイドルやってくるんだ」と口を滑らせてしまったのだ。あわてて撤回しようとしたけれど、その子は目を丸くして、「せんせいってアイドルなんだ」と驚いていた。  そのきらきらと輝くような表情が可愛らしくて可笑しくて、なんだか元気をもらったような気がして、ライブの終演まで体力が保ったのはきっと別れ際のその子の「がんばってね」という一言のおかげかもしれなかった。  ピンチに陥って諦めかけた魔法少女に復活の力を与えるのは、いつだって応援の声だと相場が決まっている。それはきっとアイドルだって同じで、人生もそうに違いないのだ。  さらに強く手を握った。爪が手のひらに食い込む。その痛みで頭の中にずっとかかっていた靄が晴れ渡ったような気分だ。 「次の方、自己紹介と簡単なPRをお願いします」  本気でやりたいって思えば、きっとなんにだってなれる。それこそ、魔法のように。  ふちの太い眼鏡のフレームの奥の眼差しが、「かかってこい」とか「かましてやれ」みたいなことを言っているような気がした。 ◆ 「瀬良さん、今お時間よろしいですか」  ある朝、出社してきた途端に廊下でチーフマネージャーの合田さんに呼び止められた。心なしか深刻そうな顔つきで、少し怖かった。 「なぁに、穂乃花ちゃんてばまたなんかやったの?」 「またってなんですかぁ!最近は何も……やってないですよね?」  桜さんがすごい失礼なことを言うものだから反論しようとしたけれど、急に不安になってきた。身に覚えがない。 「この前うち泊まるって言うから部屋掃除したのに帰っちゃったじゃん……」 「その節は本当に申し訳ありませんでした……」  私の自宅から事務所が少し遠いものだから、朝からお仕事がある前日はたまに桜さんの家に泊まらせてもらっていた。かく言う昨夜もそうでいつも助かっているっていうのに、その時は本当の本当にうっかり忘れていつもの電車に乗って帰ってしまったのだ。 「次やらかしたらもう泊めないかんね」 「そんなぁ〜!」 「瀬良さん」  そんなやりとりを続ける私と桜さんに、合田さんは埒が明かないと判断したのか強引に割って入ってきた。 「藤間さんは準備をなさってください。瀬良さんはこちらへ」 「骨はあとで拾ったげるから、がんばってね〜」  ウィンクに投げキッスまで寄越して、桜さんはさっさとエレベーターまで行ってしまった。残された私はこれから起こるであろうお説教のことを考えて顔をしわくちゃに歪めながら、合田さんの後について空き会議室へ向けてとぼとぼと歩いた。  何をやらかしたんだろう。本当に身に覚えがない。いや、もしかしたら気づいてないだけで身に覚えがありまくるのかもしれない。  恐る恐る荷物を置いて席につくと、向かいに座った合田さんは手にしていたフォルダから封筒を一通取り出して机の上に置いた。 「おめでとうございます。例のオーディション、合格を頂きましたよ」 「はい、その節は本当に申し訳……はい?」  謝罪の決まり文句を半自動的に口走りかけたとき、予想だにしていなかった単語が耳に飛び込んできて思考が停止した。 「「「「おめでとー!」」」」  間髪入れずに扉が開き、ぱんぱんぱん、と銃声みたいな破裂音が室内に響きわたって火薬の匂いが鼻をつく。クラッカーの紙テープまみれになりながら入り口の方を見ると、同期の4人がそこにいた。 「おらおら!ケーキ様のお通りだぞ!」 「もうちょっと丁寧に扱いなさいよ」  続いて桜さんとニコルさんも入ってきて、この会議室もいよいよ収容人数過多だ。  朝一番からいっぺんに色々なことが起こりすぎて、半分放心状態になりながら机の上に置かれた封筒を開いて中身を確認すると、中から現れた紙には確かに『合格』の二文字が記されていた。  あぁ、そうか。  私、本当に魔法少女になれたんだ。 了