白銀の峰々がどこまでも連なる雪国へ向けて、早朝のターミナルを出発した高速バスは、規則的なエンジン音を響かせながら灰色のハイウェイをひた走っていた。 平日の便ということもあって、乗客はまばらだった。運転席から遠く離れた最後列の座席には、厚手のマフラーに顔を埋めた飛鳥と〇〇が並んで腰を下ろしている。観光用の大きなダッフルバッグを足元に滑り込ませ、周囲の視界を遮るように二人で一枚の大判ブランケットを腰から膝にかけて深く覆っていた。 「……えへへ、〇〇さん。やっと出発しましたね。先生への申請書、何回も書き直して大変だったんですよ? 『豪雪地帯における極限環境適応訓練および雪中行軍の自主演習』って名目で、班長印も先生の承認印もばっちり貰ってきましたから。……まさか、〇〇さんと二人っきりで二泊三日のスキー旅行に行くなんて、斑鳩さんたち夢にも思ってないはずです」 悪戯っぽく茶色の瞳を細めて囁く飛鳥の吐息が、〇〇の耳朶をくすぐる。普段の制服姿や忍装束とは異なり、柔らかな淡い桜色のニットに身を包んだその姿は、どこからどう見ても普通の、恋人と旅行に出かける年頃の可憐な少女そのものだった。しかし、ブランケットの下でゆっくりと蠢き始めた小さな手つきは、日頃の命懸けの修行で培われた尋常ならざる器用さと大胆さを秘めていた。 「でもね……〇〇さん。バスに乗り込んだ時から、ずっと気になってたんです。……隣に座る〇〇さんの身体、すっごく熱くて……」