某国の安酒場のカウンターで、一人の男がグラスを傾けていた。彼こそ新進気鋭のPT「キブリーズ」のリーダーの"あなた"。"あなた"は一人の男の到着を待ちながらグラスを揺らし続けている。  やがて、その男が来た。仮面を付けた剣士が酒場に入店した。一瞬の隙も見つからない身のこなしから、その男が只者ではないことを伺わせる。  迷わずカウンターに進むと、「待たせたな」と言いながら"あなた"の隣の席に座った。  "あなた"は男にウイスキーのロックを注文すると、早速本題に入った。 "気ぶり仮面、なにから聞きたい?" 「そうだな…」  ロックを一口煽り喉を潤した仮面の男──気ぶり仮面は、腕を組んで暫し考えたのち口を開いた。 「ツジカイとナチアタで」 "ツジカイが、ナチアタの甲殻の掃除だと、モップとバケツを手に清掃に赴いた時の事だった" 「待って。この時点で尊いんだが」  『ねーちゃんのとこに行ってくる!』と言ったツジカイが中々戻らなず、不審に思った"あなた"がナチアタ・コンナーニの所に足を運んでみると、ツジカイはナチアタの足元で昼寝をしていた。ナチアタの甲殻はピカピカになっていたことから、清掃が終わった後疲れて眠りこけてしまったらしい。  ナチアタはツジカイに日光が当たらないよう、微妙に体を動かしてツジカイの位置が日陰になるようにしていた。その時の彼女の人狼の少年を見る目は、慈愛に溢れていた。 「いい…!」 "だろ!?"  "あなた"と気ぶり仮面は同時にグラスを一気に煽った。 「ツジナチキテル…」 "ツジナチキテル…" 「次に、ギルを聞こうか」 "まあ、彼に特段の進展はない。だだ…" 「ただ?」 『ギル―?どこに行くの?』  サーヴァイン・ヴァーズギルトが出かけようとすると、ハナコは着いていきたがる。 『ギル!ちょっとこの町の商店街見に行くから一緒に来てよ!』  逆に、街中を物色する時はハナコは渋るギルの腕を引っ張って半ば強引に連れていく。  ハナコはまだ気づいてはいないが、ハナコの身に纏うスーツは結構際どく、道行く男たちの邪な視線を集めやすい。そんな時にギルは、ハナコをマントや棺桶でハナコを男の視線から護っている。そして眼光鋭く男たちにを睨みつけ、追い払っているのだった。 「スゥーーーー……フゥーーーー……」  深く息を吐いた気ぶり仮面は、感に堪えないような様子で仮面を手で覆いながら呟いた。 「ギルハナ尊い…」 "ギルハナ尊い…" 「最後に、クリストを聞かせてくれ」 "昨日がハロウィンだったのは知ってるな?" 「ちょっと待って、覚悟決めるから」  フレイ、ナタリア、ジーニャ、イワン、ラーバル、ツジカイ。彼等ハロウィン衣装に身を包んだ年少組に纏わりつかれたクリストは、手持ちの菓子を全て手放してしまった。  その時を見計らって、ミイラ姿に化けた大トリのイザベラが、所々包帯の間に素肌を晒し、顔を真っ赤にさせながらクリストに接近した。 『トトト、トリックオアトリート!?』 『イ、イザベラ様ぁ!?』 「それで、どうなった!?」  菓子がないことをクリストが白状すると、イザベラはクリストの背後に回り……。 『こちょこちょこちょこちょ…』 『あ、あはははは!!イザベラ様お許しください!』  クリストの頸や脇の下をくすぐった。 「たまんねえなあ!」 "ああ!"  "あなた"と気ぶり仮面は一気にロックを飲み干した。 「イザクリ最高!」 "イザクリ最高!" 「さて、ではそろそろお開きにしようか。今回も存分に気ぶらせてもらった」  気ぶり仮面が銀貨の入った巾着袋をカウンターに置いた。置かれたときの音から結構な額が入ってあるであろう袋には目もくれず、"あなた"は気ぶり仮面に尋ねた。 "そろそろ名を聞かせてくれても?名前がわからなければ結婚式の招待状も送れない"  気ぶり仮面は、"あなた"の言葉に静かに首を振った。 「俺に名乗る名などない……ただの気ぶり仮面で十分さ」  そう告げ背を向ける気ぶり仮面を見送り、一人になった"あなた"はため息を吐きながら、彼が飲み終えたロックのグラスに目を向ける。  "彼にも幸せを告げる、幸せな出会いが訪れますように"と、そう神に祈りを捧げると袋を懐に仕舞い、会計をすべく立ち上がった。