異変が起きたのは一昨年‘21年7月14日のこと。前日、初めてのコロナワクチン接種を受けたA子さんが朝、起きてこなかったのだ。元々はワクチン接種には消極的だったAさんだが、当時、『ワクチン接種証明』を出していない店では安心して食事ができない、という雰囲気があり、渋々ワクチンを受けることにしたという。

「部屋から出てこない、と祖母が親族に連絡したんだそうです。母と祖母は同居していたんですが、祖母は体が不自由でが様子を見に行けなかったんですね。それで近所に住む従妹を呼んだのですがその従妹の話では、母は意識がなく、目は開いているけれど焦点が合っていないし、時折うめくだけの状態で、すぐに救急車を呼んだそうです」（浅川さん、以下同）

　運ばれたのは『群馬中央病院』。脳出血の疑いがあり、日赤病院に転院。病名はくも膜下出血。すぐに手術となった。

「（群馬中央病院の）先生から『６月ごろからくも膜下出血を起こしていた可能性がある』と言われました。そのまま母は昨年3月まで入院し、退院した後も後遺症が残っていてお店にはとても立てていません」

あの時きちんと聞いておけば……
　浅川さんは当時、大阪に住んでいた。関西を中心に活動中のアイドルグループに所属してためだが、どうしても抜けられなかった数公演をこなして群馬に戻った。病院にかけつけたとき、母の姿を見て驚いたという。

「意識はありましたが寝たきりで、顔の筋肉がうまく動かせなかったため言葉もほとんど話せない感じでした。どこまで戻るかはわからないし、まだ予断を許さないともいわれて、どうしようという思いがどんどん強くなっていったのを覚えています。一体どうして？　コロナワクチンを打ったからくも膜下出血になったのではないのか？　という思いはあったけれど、そのあたりをお医者さんに詳しく聞くとかそういう状況ではない気がしてしまってお医者さんにそこをしっかり聞けませんでした。今となってはそれがいけなかったと自分を責めていますが、そのときはとにかく母が心配で心配で」。

SNSで言えなかった本当のこと
１年半が過ぎた今もA子さんには多くの後遺症が残っている。

「右半身が動かないし、言葉が出てこないし、寒い暑いがわからない、など数えれば限りなくあります。さらに、すべてに投げやりになってきているというか、何かをしようという気にならないみたいで、放っておくとご飯の支度はおろか、食べようという意欲も薄かったり。かと思うと最近は満腹中枢がおかしくなっているらしく、モノを食べ続けたり……。人一倍おしゃれに敏感だったのに身なりも構わなくなってしまったし、ぼーっとしていたのが急に怒り出す、涙ぐむなど感情の起伏が激しくて。また自分の声の大きさがわからないみたいで、いつも怒鳴っているような話し方になってしまっているんです。まだ40代前半なのに……」

浅川さんも店に出られる日は手伝っているが東京での芸能の仕事もあり、毎日店に出られるわけでもない。

「ずっと母が女手一つで切り盛りしていたので、母が倒れてから細かいことが誰にもわからず、経営が思うようにいかなくなった。快活な母がいた頃とは店の雰囲気から味まで変わってしまったと常連さんに言われましたし……何とか立て直したくてSNSでいろいろ発信しようしましたが、周囲から『客商売なんだから暗い話は書かないほうがいい』といわれて。バズったように見えてますけど、私がお店に出てます、といった『会いに行けるグラドル』の話で盛り上げるしかなかったというのが正直なところなんです。それももう通用しなくなってますしね。今は叔母（A子さんの実姉）が手伝ってくれていますが、以前の状態には程遠く、店の売り上げだけでなく日常の収支も考えると非常に厳しい状況です。いろいろ相談に乗っていただいている弁護士さんからも『このままではA子さんは破産宣告をする事態になります』と言われています」

無理をして明るくSNSを発信していたという

浅川さんにはずっと胸の奥でひっかかっていることがあるという。

「接種前からクモ膜下出血を起こしていた可能性がある、とお医者さんから言われたんですが、それならなぜ、事前に接種を止められなかったのか、と。どうやら母は接種前にしばしば頭痛を感じていて市販の頭痛薬を飲んでいたそうです。母の記憶では接種前の問診でもそのことは伝えたそうです。ただ、昔から頭痛もちでよく薬は飲んでいたので、『薬は普段もよく服用している』とも言ったという話でした。でも、私が近くにいれば、頭痛が頻繁に起きているという時点でワクチンは受けさせなかったのに、という後悔と、お医者さんに止めてほしかったという残念な思いがどうしてもありますね」

年末年始もお客さんの入りは「いまひとつでしたね」と浅川さん
「それに、なぜ注射を打ったのかということをもっときちんと問いただすべきだったんじゃないかな、と反省してるんです。でも、親族からは『病院を責めているみたいにしたくない』と言われたり、何より当の母が『お医者さんに何か言ったって元のカラダに戻るわけじゃないし。運命だから仕方ないよ』って諦め気味なので……。別に病院を訴えようとかいうことでもなく、本当は何が原因だったのかを聞きたいだけなんですけどね」

「評価不能」で99％が認定されない救済制度
コロナワクチン摂取後に血液の粘度が上がりやすい傾向がみられることは多数報告されているし、A子さんのようなくも膜下出血などの事例も厚生労働省に多く届いている。しかしいまだに正式な副反応としては認定されていないのが現状だ。

また厚生労働省は『予防接種保険被害救済制度』を設けているが、コロナワクチンとの因果関係が証明できないという理由のもとに、申請した人のほとんどが「評価不能」とされる狭き門で、救済とは名ばかりだという声も上がっている。各自治体が設けている『（ワクチン）副反応休業助成金』に関しても運用状況は同様だ。

本来ならA子さんのケースだとコロナワクチンとの因果関係が認められれば、『予防接種法に基づく救済（医療費・障害年金等の給付』が受けられ、介護加算まで含めれば年額で最低でも300万円以上がおりることになる。さらに無理をして店を開けなくても既定の『副反応休業補償金』が支給される。しかし、その因果関係を証明するためにはまず病院側の認定、その後自治体への申請と手順を踏む必要があるのだ。

「いまになってそんなことを言い出したら『あそこの家は補償金欲しさに騒いでる』って言われるのは確実ですからね」と浅川さんは対応の難しさにため息をつく。

「評価不能」で99％が認定されない救済制度
コロナワクチン摂取後に血液の粘度が上がりやすい傾向がみられることは多数報告されているし、A子さんのようなくも膜下出血などの事例も厚生労働省に多く届いている。しかしいまだに正式な副反応としては認定されていないのが現状だ。

また厚生労働省は『予防接種保険被害救済制度』を設けているが、コロナワクチンとの因果関係が証明できないという理由のもとに、申請した人のほとんどが「評価不能」とされる狭き門で、救済とは名ばかりだという声も上がっている。各自治体が設けている『（ワクチン）副反応休業助成金』に関しても運用状況は同様だ。

本来ならA子さんのケースだとコロナワクチンとの因果関係が認められれば、『予防接種法に基づく救済（医療費・障害年金等の給付』が受けられ、介護加算まで含めれば年額で最低でも300万円以上がおりることになる。さらに無理をして店を開けなくても既定の『副反応休業補償金』が支給される。しかし、その因果関係を証明するためにはまず病院側の認定、その後自治体への申請と手順を踏む必要があるのだ。

「いまになってそんなことを言い出したら『あそこの家は補償金欲しさに騒いでる』って言われるのは確実ですからね」と浅川さんは対応の難しさにため息をつく。

この姿も見られなくなってしまうのだろうか
「心機一転、今年は自分の夢を一生懸命追いかけたらいい」。

A子さんから正月にかけられた言葉に感謝しつつも、浅川さんは後悔の日々を送っている。

あさかわ・まりな　2000年11月29日生まれ。群馬県出身。T168B91W64H97 アイドルグループで活動後、現在はグラビアアイドルとしてソロでも活動中。　

とりあえず攻めた感じのアイドル居酒屋として自分で営業すれば、それ目当てのオタクでけっこう繁盛するだろうよ

辛すぎるよね…