その貧乏神、依神紫苑は火を焚いて肉を焼いていた。
男は『まさか！』と思って駆け寄り、その肉は何だと問うた。
「さっきアオダイショウを捕まえたから。　焼いて食べてる。」
男は紫苑に殴りかからんばかりに、その蛇は俺の蛇だ！　と
喚き散らし、泣いてもんどりうった。　事情はよくわからないが
そのアオダイショウが上手い具合に焼けたので、地面を転がって
泣いている男の事を無視して食べ始めた。　男はそんな淡々とした
貧乏神の女に憤りを覚え、自分が飼っていたアオダイショウを
食うなんてお前は人でなしだ、などと罵り始めた。
「美味しいよ。　貴方も食べる？」
それでも、飄々とした態度の貧乏神を見て、男は泣き疲れて
勧められるがままにアオダイショウの串焼きを食べた。
黙々と、アオダイショウを食べ続ける紫苑をぼーっと見ていると
やがて食べ終えたので、男は冷静さを取り戻して言った。
そのアオダイショウは俺が育てていたんだ、と。（続）

「そう。　それじゃあ貴方に感謝しないといけないわね。」
紫苑はまた淡々と、眉一つ動かさないで男と向き合っていった。
「ごちそうさまでした。　おいしかったです。」
合掌して頭を下げる紫苑に、納得してしまいそうになったが、
男はお前に食べさせる為に育てていたんじゃない！　と
激高する態度をして見せ、紫苑に対して叱責をし始めた。
「じゃあ、何か恩返ししないといけないわね。」
男はそうだ、慰謝しろ、俺に詫びろなどと男らしくない事を
いくつも口に出したが結局どうして欲しいのかを言えなかった。
「何か１つ、願い事を叶えてあげるってのはどう？」
紫苑がその男に慈悲を見せてそう提案すると、男は
悩んでしまった。　何かひとつだけ…　何を言えばいい？
卑しい男は、紫苑に対して何か痛い目に遭わせてやろう、と
下衆な考えを凝らし始め、やがて紫苑にこう言った。
『俺の蛇の、弁償をしろ。』（続）

そう言われた途端、紫苑はけらけらと笑ってしまった。
「この貧乏神の私に、お金が払えると思う？」
男はぐぬぬ、と思ったが感情的に捲し立てた。
金がないなら稼いで来い、誰からでも借りて来い、と。
「人から借りたお金を払う事が、本当の弁償になるのかしら？
　今の貴方は私に嫌がらせがしたいだけで、貴方の願い事を
　言っているわけじゃない。　そうじゃない？」
紫苑が冷静にそう指摘すると、男は黙ってしまった。
男はよく考え直して、もう一度願い事を言ってみた。
『腹癒せに、お前を手籠めにしてやる。』
そう言って紫苑を慰み者のように扱おうとしたが、これも
紫苑は焦りもせずにふっと軽く笑って言った。　
「ここでそんな事したら、貴方が打ち首になるわよ。」
男は自分があまり賢い人物ではない事を自覚させられて
腹を立てたが、どうしても名案が浮かばなかった。（続）

「願い事が思いつかないの？　不思議な人ね。」
男は自分自身が何を望んでいるかと言うより、この
いけ好かない女をどうにかギャフンと言わせてやりたいと
考えていたので、ちっとも妙案が思いつかないのである。
「いつまでも待ってられないわよ。　私、喉乾いたから。」
と、紫苑は川に向かって歩いて行くので、男も付いて行った。
やがて玉石がゴロゴロとしている川辺にやってくると、紫苑は
口を漱ぎ、川の水を飲み始めた。　男も喉が渇いたので
冷たい川の水を飲むと、頭が冴えた気がした。
『泣いて謝れ。』
男が、いかに自分が蛇を大事に育てていたか、そして
ネズミや鳥を捕獲して餌にしていたか、情を誘うような
話をして、お前もそれにふさわしい態度で、俺の事を
慰安しろ、と命令したが。　これもどうやら通じていない。
「私が泣かないと、満足じゃないの？」（続）

そうだ。　俺は傷ついた。　俺のペットを食った。
と更に捲し立てるが、紫苑はやはりきょとんとしている。
「貴方は結局、私を泣かせたいだけじゃない？」
そうだ！　と、力強く言うと、紫苑はそれを受け入れた。
「じゃあ、それでいいのね？　私が泣けばいいのね？」
あっさりとそれを受け入れられて、男は拍子抜けする。
そして、みるみるうちに紫苑は目に涙を溜めていった。
「貴方のペットの蛇を食べて、ごめんなさい。」
紫苑はポロポロと涙をこぼしながら、そう謝った。
お、おう…　と、男は腑に落ちない気持ちになった。
「それじゃあ、これで。　チャラって事でね。」
紫苑は涙を拭いて、あっという間に淡々とした顔に戻った。
『……。』
それを命じた以上、何も言い返せない男は、やがて
紫苑がフラフラとどこかへ歩いて行くのを見送っていた。（続）

その日の晩。　男は自分自身の願い事や紫苑の態度について
自分の部屋で粛々と考えていた。　自分はもっと、何か、
別の事を願うべきだったのではないか？　俺は本当は、
彼女に何をしてもらいたかったのだろうか？　と。
頭の中は紫苑の事でいっぱいになり、布団の中に入っても
寝付けずに夜が更けていった。　そして、朝になった。
男はようやく、今更自分の本当の気持ちに気が付いた。
『俺が本当に言いたかった事は、あんな事じゃなかった！』
男は家を飛び出して、紫苑を探した。　そして昨日来た
川辺に行くと、彼女がそこで朝から釣りをしていた。
「貴方は。　まだ何か用…？」
紫苑が怪訝そうな顔でそう言うと、男は言った。
俺はやっとわかった。　自分が本当に願っていた事は！
『お前が食った、俺の蛇を返せ！』
そう、これだ！　素直に最初からこう言えばよかった！（続）

ドヤ顔でその男が言うと、どこかでカッコウが鳴いた。
「いいわよ。　じゃあ返してあげるわ。　貴方の蛇。」
紫苑がニヤリと、いやらしく笑ってそう言った。
男は自分の飼っていたアオダイショウを返してもらえる！
と内心、大喜びしていた。　そして、紫苑がどんどん
歩み寄ってくると、その男の手を取った。
「座って。　そして、目をつぶってくれるかしら。」
男は言われるがまま、座って目をつぶった。
そして両手を皿のように構えて座って待っていた。
「そんじゃ、出してあげるからね。　昨日の蛇。」
紫苑がそう言うと、ふんっ！　とため息を吐いた時。
男は手の上に重みを感じた。　何かを受け止めた。
「はい、昨日の蛇。　返してあげたわよ。」
紫苑は男の手の上に、糞を放ったのだ。
男の手の上の糞は、見事にとぐろを巻いていた。（終）

普通にこれ

幻想郷なら食われたアオダイショウの霊が妖怪化＆少女化して恩返しにくる展開があってもいいはずだ

ｷﾀ━━━(ﾟ∀ﾟ)━━━!!

全部読んだ時間を返して欲しい…

貧乏神らしいっちゃらしいが…

ｷﾀ━━━(ﾟ∀ﾟ)━━━!!

ヘビを返せと言われてクソで返すのならば焼き味噌代わりに俺のミソを喰らえ！も通るということだな

ちょうどそこに愛蛇焼いてた火があるし
もらったうんこ焼いて叩きつけても許されるのでは？

クソスレ

この世で一番底辺な神来たな…

妹ですら黙って首を横に振るレベル

>幻想郷なら食われたアオダイショウの霊が妖怪化＆少女化して恩返しにくる展開があってもいいはずだ
読んでて真剣に男に可哀そうだと思ったのでＡＩ画像だけど作ってみた
妄想の中の世界でだけど幸せになってほしくなったんだ
自分のために真剣に怒って貧乏神にも立ち向かおうとした男のために感謝するそんなアオダイショウちゃん…

貴方の姉さんでしょ？どうにかしてよ……

>貴方の姉さんでしょ？どうにかしてよ……
適当に悪態つきながらお金ばらまいて蛇ならまあそれでいいでしょ？って言ってくるよ